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第9回 不況の今すべき知財戦略とは? PART-I 少ない予算で特許ポートフォリオを充実させるには 

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不況の今すべき知財戦略とは? PART-I 少ない予算で特許ポートフォリオを充実させるには   昨今の経済情勢のあおりを受け、企業としては、できる限り資金を節約し、この嵐を乗り切りたいところだ。あるCEOは、「特許出願のために弁護士事務所に1件あたり2万ドル払ってきたが、今の景気を考えると、それがベストなのだろうか疑問である」と言う。とは言え、困難な時期だからと知的財産をないがしろにしていては、いずれ景気が回復したときに、他社に後れを取ることになりかねない。この現状に企業としてはどう対応したらよいか。予算捻出が非常に厳しい今日でも、特許ポートフォリオを地道に構築するためにできる取り組みがいくつかある。   1)   特許の仮出願 発明を保護する手段として、特許仮出願という方法がある。特許の出願には、基本的に仮出願と本出願の2種類がある。仮出願をする事により、発明の優先日を確保する事が可能で、USPTO(米国特許商標庁)による綿密な審査はされない。資金と労力をつぎ込み、本出願をするかどうかは仮出願日より一年以内に決断すればいい。 費用:仮出願の最大の利点の一つに、出願料の安さが挙げられる。仮出願の料金は、弁護士に支払う料金を計算に入れても、正規の出願よりも相当安い。仮出願料は、ほとんどの場合において数百ドル程度であり、弁護士費用を足しても、仮出願に要する費用は安価である。 時間:仮出願では形式的要件が本出願ほど厳しくないため、時間も資金もあまりかけずに、発明に関して早い優先日を確保できる。出願人は出願後1年以内に、その発明が米国内や海外で特許権保護を受ける価値があるかどうかを判断すればいい。米国での本出願また海外での特許出願は、この1年内に行わなければ、仮出願は法的効力を失う。この1年の猶予期間により、出願人は経済状態の改善を待つことができる。つまり、特許出願を視野に入れた着想がいくつかあるが、その時点では資金不足という場合に、仮出願という形でポートフォリオを構築しておける。 「特許出願中」:仮出願を行うと、仮出願の明細書に示した発明を具体化した製品に「特許出願中」という表示を付けることができる。特に、これは出願人がベンチャーキャピタルからの資金調達を試みる場合に、特許権保護の手続きが進んでいることを提示できるという意味で役に立つ。さらに、ベンチャーキャピタルに仮出願特許のポートフォリオを見せ、少なくとも一部の仮出願特許に対して出資を求めることもできる。 また、製品・発明内容が仮出願によってプロテクトされているので、出願人は出願内容を公に開示しても大丈夫だ。これは国際出願においても同様に適用され、国際出願の場合も、米国で行った仮出願に基づき優先権を主張できる。 「機密保持」:仮出願の内容はUSPTOによって公表されず、その仮出願を優先権として主張し本出願を出願をした場合に、仮出願日(一番早い出願日)より約18ヶ月後、USPTOのウェブサイト上にて公表される。つまり、本出願を行わなければ、だれも仮出願の内容を見ることはできない。このため、仮出願で開示した情報を競合他社に知られる心配がない。   2) 勤勉性の立証による進行中のプロジェクトの保護   進行中のプロジェクトを勤勉に継続してきたことを示す経時的記録は、後に米国で特許を取得する際、驚く程有効がある。本稿執筆時点では、米国は世界で唯一、先願主義ではなく先発明主義を採用している国である。このため、現在の景気が原因で、進行中のプロジェクトに遅れが生じた場合、この不況の間に形だけでも勤勉性を維持すれば、経済情勢が上向くまで待つという時間稼ぎができる。   勤勉性の立証:ある会社が相当数の社員を一時解雇したため、一部のプロジェクトで人手が不足し、放置されたとする。後になって、そのプロジェクトが特許出願につながった場合、これは問題になる可能性が高い。その会社が発明を放棄したと特許商標庁が判断すれば、特許を取る可能性は失われる。また、その会社の出願日よりも前に競合他社が同じ発明を出願した場合も、大打撃である。研究開発活動や進捗状況を詳細に記録し、着想日と継続的な努力を立証することは、そうしたシナリオからの自衛手段として有効である。この目的のために、ぜひ、ページ番号・証人の署名・日付を入れた発明者ノートブックを作るよう強くお勧めする。 例えば、Able社という架空の会社が他に類のない製品を着想したが、開発には何年もかかるとする。そこでAble社は、段階を踏んで徐々に開発を進めることにした。このプロジェクトへの資金力がAble社には十分にないため、まずは技術者が集まり、紙と鉛筆だけで、あるいはコンピュータでシミュレーションを行い、プロトタイプの着想を出し合うような簡単なことから始めることにする。また、実行した取り組みはすべて詳細に記録し、記録には本人と証人の署名を入れ、製品の開発が完了した(または実用化された)時点で出願する決定をする。 同じ頃、別会社、Baker社も、Able社よりもかなり遅れてではあるが、同じ製品アイディアを着想する。この製品について簡単に研究開発作業を行っただけで、Baker社は速やかに特許出願を行った。その直後にAble社も、Baker社がすでに出願していたことを知らずに、特許出願を決定する。その結果起きた裁判では、Baker社の特許出願日がAble社の出願日の前であるもかかわらず、Able社が特許権を与えられることになる。それは、記録に基づき、Able社が該社の着想日がBaker社の着想日よりも早いこと、また、Baker社の着想日以前からAble社が出願に至るまでのいかなる時点でも、発明を放棄しなかったという勤勉性を立証できるからである。 ただし、そうした受け身的なルートを選ぶことには、当然、ある程度のリスクが伴う。こういった場合においては、次の点に注意が必要だ。   第三者による公表:第三者がAble社の製品に関する詳細を公表した場合、Able社は公表された日から1年以内に特許の出願を行うものとする。ただし、米国外ではAble社はおそらく特許権を取得できない。米国以外のほとんどの国では、ごくわずかな例を除き、そうした公表は絶対的な特許障害として扱うためである。第三者による公表には、公表された特許出願も含まれる。...

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